足立区五反野地区の総鎮守として地域住民から崇敬の念を集めている西之宮稲荷神社が今年創建450年の節目を迎えました。秋の例祭が終わり落ち着きを取り戻した神社境内で、宮司の唐松孝文さんにお話をお聞きしました。

◆宇迦之御魂之命
(うかのみたまのみこと)
商売繁盛・家内安全・五穀豊穣など
◆須佐之男之命
(すさのおのみこと)
厄除け・災難除けなど
――今年の例祭も昨年と同様、大盛況でした。
(唐松宮司)ありがとうございます。おかげ様で祭礼を無事に執り行うことができ、安堵しております。これも当神社を支えてくださる皆様のお力添えの賜物です。
――西之宮稲荷神社は今年創建450年の節目を迎えたとのことです。
(唐松宮司)当神社は天正2(1574)年に京都伏見稲荷大社の御分霊をいただきこの地に鎮座しました。
――戦前はこの地域は弥五郎新田と呼ばれていたとのことですね。
(唐松宮司)そうですね。明治以前は東の宮、本田の宮、西の宮の三つの稲荷神社がありましたが、明治初期に西の宮が東の宮を合祀、さらに荒川放水路開削が行われた大正元(1912)年に西の宮が本田の宮を合祀し、西之宮稲荷神社が弥五郎新田の総鎮守となったのです。
――長い歴史のうえに成り立っているのですね。
(唐松宮司)本来であれば今年は四百五十年の式典を斎行すべきなのですが、コロナ禍による混乱が長期に及んだため数年前から進めておくべき準備ができず、誠に残念なことですが実施を見送ったのです。
――コロナ禍の時期には例祭の斎行自体が見送られていたのですか?
(唐松宮司)令和2(2020)年から令和4(2022)年にかけて見送りとなりました。昨年は4年ぶりの例祭を斎行することが叶い、地域の皆さんにもお喜びいただけました。
――今年は9月14日には宵宮の行事が厳かに執り行われました。
(唐松宮司)祭りの運営全般を地域住民の有志により構成された「祭礼委員」が担っています。私自身が地域の十三社の宮司を兼職しているため、日々神事に忙殺されているのですが、祭礼委員の皆さんが例祭の実務を円滑に進めてくださるので、本当に助かっています。
――午後一時からは神楽殿で祭囃子、夕方からは神楽が披露されています。
(唐松宮司)祭囃子については「五反野祭囃子保存会」の皆さんが、演者の募集から指導(日常的な練習)に至るすべてを担ってくださっています。
――ご高齢の方から小中学生まで、幅広い年齢層の皆さんが熱演されていました。境内はとても風雅な雰囲気になりましたね。
(唐松宮司)神楽については「囃子連」の皆さんが演者となってくださいました。例祭を盛り上げるとともに、地域伝統芸能を次世代に伝えるべく活動している皆さんの活動には頭が下がります。

――午後3時からは神職による神事が行われています。
(唐松宮司)地域の皆様がこれからも安寧に過ごせるよう、禰宜とともに祈祷いたしました。
――そして、午後7時からは神楽殿で「奉納演芸会」が開催されました。
(唐松宮司)こちらは祭礼委員が運営を担ってくださいました。希望者が多かったようで、多くの人たちがご出演くださいました。
――皆さんの芸達者ぶりに私も瞠目いたしました。ところで、境内には多くの露店が立ち並びました。バラエティが豊富で目移りするほどでした。
(唐松宮司)露店については露店商の出店希望を神社側で受け入れて出店しています。スペースの制限は設けていますが、どういう品物を販売するかは、露店商にお任せしています。
――9月15日は午前9時から子供神輿の宮出しが行われ、正午まで五反野界隈を練り歩いています。
(唐松宮司)子供さんのお神輿は保護者の方からもとても好評のようで、毎年多くの子どもたちが参加してくれます。参加者にはお菓子を差し上げていますが、子供たちはとても喜んでくれます。
――そして、午後1時には大人の神輿の宮出しが行われました。
(唐松宮司)子供、大人とも神輿については祭礼委員と「西之宮睦」という神輿の運営組織が周知や担ぎ手の募集、当日の運営、交通整理を担っています。


――多くの皆さんの力で、今年の祭礼も成功裏に終わったのですね。
(唐松宮司)昭和20(1945)年5月の空襲では、この一帯にも焼夷弾が投下されました。その際に当神社の本殿は焼失してしまったのですが、地域の街区には一切被害が出ませんでした。そのため、地域の皆さんは「神社が私たちの身代わりになってくださった」とお考えくださり、いっそう当神社に対する崇敬の念が厚くなったとのことです。
――現在の本殿が平成12(2000)年に造営された際にも、地域の皆さまから多くのご寄進があったとお聞きしております。
(唐松宮司)そうですね。地域の企業や個人から多くのご奉賛をいただいております。
――地域の皆さまに慕われるとともに、心のよりどころになっているのですね。
(唐松宮司)本当にありがたく感じております。今年の祭礼も地域の皆さんの献身的なお支えがあってこそ、事故やトラブルもなく恙なく進行することができました。改めて、この場をお借りして御礼申し上げます。
――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。(聞き手:本誌編集長)