編集部厳選 夏のお出かけガイド③

開館35周年の東武博物館を徹底探訪

東武鉄道の資料を収蔵・公開する東武博物館(墨田区東向島)は、身近な交通機関である電車やバスについて楽しみながら理解が深められるよう、趣向を凝らした展示物が多数ラインナップされています。本年5月に開館35周年の節目を迎えたこの博物館では、収蔵資料やアトラクションの更新も随時進めており興味が尽きません。

1989(平成元)年5月に東武鉄道の創立90周年記念事業として開設された東武博物館は、国内を代表する鉄道展示施設として全国的にも高い知名度と人気を誇っています。施設は東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)東向島駅高架下に設置されており、駅から徒歩1分というアクセスの良さも魅力的です。

館内には12両の静態保存車両が展示されていますが、いずれも産業遺産・交通史料としての価値が高いものばかりです。エントランスに面して展示されるB1形5号蒸気機関車は、東武鉄道開業当初にイギリス・ベヤーピーコック社から輸入された小型機関車で、製造年は1898(明治31)年という古豪です。この機関車を用いた「SLショー」は、汽笛を鳴らしながら車輪を回転させるというイベントで1日4回(各回3分)実施されます。

デハ1形(5号)電車は、1924(大正13)年に竣工した東武鉄道で初の電車(電気を動力とする旅客車両)で、当時流行した前面5枚窓や、明かり取り用に設置された天窓を持つダブルルーフ構造など、大正末期の電車製造様式を今に伝える貴重な存在です。車内も公開されておりシートに着座することも可能なので、往時に思いを馳せながらじっくりと堪能してみたいものです。ED5010形(5015)号は東武鉄道の貨物列車牽引に活躍した電気機関車で、1962(昭和37)年に製造されました。台車(車輪)や連結器など、普段あまり近くで見る機会がない電気機関車のディテールを間近に見ることができます。

エントランスに面したホールで展示されるデハ1形5号電車 東武鉄道開業当初の電車で、産業遺産としての価値も高い
エントランスには大正末期の電車デハ1形5号が良好な状態で展示される。
車内にも入ることができ、当時の鉄道車両への理解が進む

建物西側(屋外)には5700系(5701号)電車とED101形101号電気機関車が並列展示されています。5700系は1951(昭和26)年に登場した日光・鬼怒川系統の優等列車用車両で、前面2枚窓で流麗なフォルムから当時の話題を席捲した名車両。ホーム型の見学台からは、登場当時の姿に復元された内外装を間近に見ることもできます。運転台や客席の転換式クロスシートの状態も良好で、高度経済成長期の観光列車の面影を今に伝える一級品の産業遺産です。

ED101形機関車は東武鉄道最初の電気機関車で、1928(昭和3)年にイングリッシュ・エレクトリック社製のオールドタイマーです。登場からしばらくは東武鉄道唯一の電気機関車として孤軍奮闘した車両で、こちらも東武鉄道の歴史の生き証人と言える車両です。

建物東側では1960〜80年代の東武鉄道の看板車両デラックスロマンスカー1720系(1721号)と旧日光軌道線の200型(203号)の2両が屋外展示されています。前者は運転台側のみが保存されるいわゆる「カットボディ」ですが、それでも室内や運転台が当時のままに残されており迫力満点。後者も現役当時の状態にレストアされており今にも走り出しそうなほど良好な状態です。連接台車の構造もつぶさに見学でき、路面電車史を語る上でも貴重な保存車両です。

1720系デラックスロマンスカーの室内
1720系デラックスロマンスカーの室内

このほかにも館内には5700系(貫通型仕様)の前面カットボディ、トキ1形貨車(無蓋車)、キャブオーバーバス(東武バス)、明智平ロープウェイのゴンドラなど、貴重な展示物がいずれも良好な状態で展示されています。

この博物館の電車用3台、バス用1台の「運転シミュレーション」も人気のアトラクションです。10030型の実際の運転台を用いたシミュレーションは、伊勢崎線(北春日部↓北千住/久喜↓館林)、東上線(志木↓池袋/池袋↓川越市)など多彩な系統、運転区間を楽しむことができる目玉施設です。運転の再現性の高さには定評があり、全国のシミュレータの中でも圧倒的な存在です(1回500円)。さらに館内には8000系や50050系の無料シミュレーションもあり、こちらは東武鉄道の全線全区間がランダムに登場することから、複数回楽しむ来場者も少なくないとのことです。路線バスのシミュレーションは日野・RE120の運転台を用いたもので、柏と川越の2コースを楽しめます。

リアルな運転体験が楽しめる10030型の運転シミュレータ
リアルな運転体験が楽しめる10030型の運転シミュレータ

館内南側の吹き抜け部分には巨大ジオラマ(鉄道模型レイアウト)「関東平野に広がる東武」があり、東武鉄道の様々な車両の模型が縦横に駆け抜けます(運転は1日5回)。ジオラマでは東武鉄道の1日が再現されており、その迫力に圧倒されることでしょう。このほかにも館内には、鉄道の台車、冷房装置、転轍機(ポイント)、信号機などの技術解説コーナーや、東武鉄道の路線延伸の歴史を示すパネル展示など、視覚的なわかりやすさに配慮した展示物群が連なります。

巨大ジオラマ「関東平野に広がる東武」
巨大ジオラマ「関東平野に広がる東武」

公道を挟んだ敷地南側の記念物の展示コーナーには、創業期から昭和・平成までの東武鉄道関連の部品や資料が収蔵・公開されており、アカデミックに東武鉄道の知識を深めたい方にお勧め。展示されている古地図には、荒川放水路開削によって付け替えられた鐘ヶ淵〜北千住間の旧線区間の位置も示されており、地理的な興味を満たす資料も満載です。

建物南側にも資料性が高い展示物が目白押し
建物南側にも資料性が高い展示物が目白押し

このコーナーと本館部分をつなぐ連絡橋部分にある「ウォッチングプロムナード」では東向島駅を通過・停車する列車の車輪(台車部分)を間近に見ることもできます。最後に立ち寄りたいのはミュージアムショップ。オリジナルの文房具やピンバッジ、パズルなど、東武博物館ならではのさまざまなグッズが販売されています。

東武博物館の開館案内

開館時間:10時~16時30分(入館は16時まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は、その翌日)
    年末年始(12月29日~1月3日) 
入館料:大人200円(交通系電子マネーの場合。現金は210円)子ども100円(4歳~中学生)
    ※障がい者割引、団体割引あり。

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